判例について
このページは、とれ2有料版読者向けに作成したものです。
が、下記の趣旨で判例をご紹介するページですので、
「判例を眺めたいな~♪」という方なら、有料版読者でない方でも
どうぞご覧になって下さいね^^
判例を紹介しまーす!
判例はがむしゃらに覚えるというものではありません!
とはいえ、最近の労働基準法の過去問を見ていると無視出来ない状態。
傾向としては、出題される判例は『繰り返し出題がある!』ということ。
ですので、とれ2でも上記繰り返し出題されている判例を中心に何度か
読んで頂く、触れて頂くということを念頭に下記のように紹介していきたい
と思っております。
ひとまず、とれ2「超重要過去問解説講座」内で取り上げたテーマに関連する
判例をご紹介したいと思います。
(今後、取り上げていないテーマも下記のような形でご紹介予定です)
●No001 本題1(法3条)総則関連 出題過去問⇒H9年、H15年
三菱樹脂事件(S48.12.12)
労働基準法3条は労働者の信条により賃金その他の労働条件につき差別することをきんじているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制約する規定
ではない。
【keikei一言アドバイス】 雇い入れは3条でいう「労働条件」に含めず! 「労働条件」=雇入れ後の労働条件についての制限のこと
●No005 本題1(法24条)5原則 出題過去問⇒H12年、H17年、H21年選択式
福島県教祖事件(S44.12.18)
賃金の過払いが生じたときに、使用者がこれを清算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金
から控除することについて、適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、賃金の全額払いの
例外によって除外される場合にあたらなくてもその行使の時期、方法、金額等からみて労働者の
経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば、労働基準法24条1項の禁止する
ところではない。
この見地からすれば、許されるべき相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない
程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、
その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定を脅かすおそれのない場合でなければ
ならないものと解される。
●実力UP掲載予定(法26条)休業手当 出題過去問⇒H17年、H21年選択式 H24年
ノース・ウェスト航空(S62.7.17)
労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」と民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」
との異同、広狭が問題となるが、休業手当の制度は、右のとおり労働者の生活保障という観点から
設けられたものではあるが、賃金の全額においてその保障をするものではなく、しかも、その支払
義務の有無を使用者の帰責事由の存否にかからしめていることからみて、労働契約の一方当事者たる
使用者の立場をも考慮すべきものとしていることは明らかである。そうすると、労働基準法26条の
「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たっては、いかなる事由による休業の場合に労働者の
生活保障のために使用者に前記の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考慮を
必要とするといわなければならない。このようにみると、右の「使用者の責に帰すべき事由」とは、
取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法
536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を
含むものと解するのが相当である。
■■ keikeiの一言♪♪━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎判例について
H21年、H22年の労基法の選択式は、「休業手当」、法24条「賃金の全額払の原則」
についてを含む、いずれも最高裁判例からの出題でした。
「賃金の全額払いの原則」に関する最高裁判例の文章の穴に入る語句は (経済生活の安定)
だったのですが、この(経済生活の安定)と「休業手当」に関する判例の文章の穴に入る
語句(生活保障)とを迷った方が多かったんです。ちょっとH21年の労基法の選択式問題
を実際見てみて下さい。
(参考までに・・・載せておきますね^^)
▼▲選択式対策問題▲▼──────────────────────────────
適当な語句をうめましょう。
休業手当について定めた労働基準法第26条につき、最高裁判所の判例は、当該制度は
「労働者の( C )という観点から設けられらたもの」であり、同条の「使用者の責に
帰すべき事由」の解釈適用に当たっては、いかなる事由による休業の場合に労働者の
( C )のために使用者に前記〔同法第26条に定める平均賃金の100分の60〕の限度
での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければ
ならない」としている。(H21選択問1-3)
>>
今日の選択式対策問題の答え C 生活保障────────────────────────────────────────────▲▼
これだけ最高裁判例が出題されると、「最高裁判例もしっかりチェックせなあかんの!!」
と思われる方も多いです。けれども、H21年の選択式問題、それ以外の3つは条文ベースの
知識で確実に選択できる問題でした。
(ラストDとE、労働安全衛生法の産業医からの出題だったのですが、ここ??だった方も
結構いらっしゃいましたが)H22年も最高裁判例からの出題でしたが、セットで出題された
労働安全衛生法の問題「突起物」と「展示」は条文対策していれば選択可能だったと思います。
今、日々その日に解説した過去問に関連する選択式を出題している意味ってここにあると
思っています。いかに日々勉強している内容を条文でも確認し、選択式対策を早いうちから
意識出来るか?確実に条文ベースの問題に対する土台固めが出来るか?
H21年、そしてH22年の問題も、たとえ最高裁判例2つ(3つ)が??だったとしても
残り3つ(2つ)の穴を確実に選択していればOKだったのですものね。
これだけ最高裁判例の出題が増えてきておりますので今年度はとれ2の中でも例年より
少し意識して判例の解説をとりいれております。が、だからといって最高裁判例を意識
しすぎると勉強の本筋がずれてしまいます!先ほどから申し上げているように、
しっかり基礎固めしていれば皆さんが恐れている選択式問題も全滅することはないです。
多くの受験生が確実に得点する箇所は落としては駄目!逆に皆さんが??と思う箇所は
得点率も低くなりますから、それほど気にする必要はないのです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■
●No005 本題2(37条)割増賃金 出題過去問⇒H10年、H18年、H23年
小島撚糸(S35.7.14)
違法な時間外労働や休日労働について割増賃金を支払わなかった場合において
その支払い義務があることは当然であり、また、支払わないときは、割増賃金支払義務違反
として罰則が適用される
●実力UP掲載予定(20条)解雇予告 出題過去問⇒H18年、H19年、H21年
細谷服装事件(S35.3.11)
最高裁判所の判例によると、使用者が労働基準法第20条所定の予告期間をおかず、又は
予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は即時解雇としては
効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日
の期間を経過するか、又は通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、その
いずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきであるとされている。
・解雇予告をせず、又は解雇予告手当を支払わず行った違法な即時 解雇の民事的効力に
ついてという判例でしたが・・・。
↓民事的効力には
1.解雇有効説
2.解雇無効説
3.解雇相対的無効説
4.選択権説
があり、上記判例は3の説を支持し、行政通達も3の立場からでています。
ちなみに、H19-4Cは4の説についてが正しいとして問題文を作問してきています。
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例題使用者が解雇予告をせずに即時解雇の通知をしたため、労働者がこれを誤信して
予告期間中に休業して就職活動をした場合には、その即時解雇の通知が解雇予告として
有効と認められるときであっても、使用者は、解雇が有効に成立するまでの期間について、
休業手当を支払う必要はない。(H9-4B)H22-2B =====================================================
⇒問題文は、使用者が法に対する無関心で予告することなく、又解雇予告手当も支払わず
に即時解雇してしまった場合。まさに先ほど知っておこうで確認した判例。
使用者の即時解雇の通知が解雇の予告として有効と認められ、かつ、解雇の意思表示が
あったために予告期間中に労働者が休業した場合。
→使用者は解雇が有効に成立するまで休業手当を支払わなければなりません。
>>
例題の答え ×
●No010 本題1(39条)年次有給休暇 過去問出題⇒H20年、H22年、H23年
白石営林署(S48.3.2)
労働基準法39条1,2項の要件が充足されたときは、当該労働者は法律上当然に各項所定日数
の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うのであるが、この年次休暇権
を具体的に行使するにあたっては、同法は、まず労働者において休暇の時季を「請求」すべく、
これに対し使用者は、同条5項但書の事由が存する場合には、これを他の時季に変更させること
ができるものとしている。かくのごとく、労働基準法は同条5項において「請求」という語を
用いているけれども、年次有給休暇の権利は、前述のように、同条1、2項の要件が充足される
ことによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまってはじめて
生ずるものではなく、また、同条5項にいう「請求」とは、休暇の時季にのみかかる文言で
あって、その趣旨は休暇の時季の「指定」にほかならないものと解すべきである。
労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定してこの時季指定
をしたときは、客観的に同条5項但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が
時季変更権の行使をしないかぎり、この指定によって年次有給休暇が成立し、当該労働日に
おける就労義務が消滅するものと解するのが相当である。すなわち、これを端的にいえば、
休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するので
あって、年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の
「承認」の観念を容れる余地はないものといわなければならない。
●No06 本題1(法第32条)労働時間 過去問出題⇒H22年、H20年、H19年
三菱重工長崎造船所(H12.3.9)
法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、
労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたもの
と評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、
就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。
大星ビル管理(H14.2.28)
法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、
実作業に従事していない仮眠時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、
労働者が実作業に従事していない仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれて
いたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる。